手のひらの多元宇宙ゴマ

手のひらごとグルングルン回転します

ボクが「プリリズ初見者」としてキンプリに轢かれた件。


(注)この記事は、映画 KING OF PRISM by PrettyRhythm の内容に言及しています。



2016年1月、オタクたちはリンボーダンスに熱狂し、ディバインゲートの存在を信じ、駄菓子を貪り、内なるロジックに耳を傾け、名前を変えて襲い来るISと冴えヒロの亡霊と戦い、おきゃんぴ娘に声援を送り、ブブキを取り出し、霊剣山で待っていた。



…はっきり言うと、満足できなかったのだ。戦争が繰り広げられ、何人もの猛者が覇を唱えた2015年の熱量、それが一気に失われてしまった気がした。禁呪を詠唱することもゲッツをすることも二度とないかもしれない。喪失感から来る焦燥を何かにぶつけたかったが、2016年1月18日時点でその願いに応えてくれそうな作品(≒サンドバッグ)は現れていなかった。ボクは何かを殴りたかった。



1月18日、ボクはプリティーリズムの映画を観ることにした。気まぐれなのであまり期待はしていなかったし、男性のサブキャラの話と聞いていたので「うたプリみたいなもので、多少いざこざがあって、ライブをやって終わりだろう」と軽く見ていたのだ。今となっては見当違いにもほどがある。




ボクが持つプリティーリズムの知識はいわゆる女児アニメで、曲に合わせてCGが踊り、ゲームは宝石を筐体にセットするもので、ドロシーという子がミルキィホームズにいそう、という程度だった。プリティーリズムとプリパラの区別も付いていないのである。

そんなボクがKING OF PRISM by PrettyRhythm (以下キンプリ) を無防備で観に行った。



……そして、ボコボコにされて帰ってきた。頭の中は「なんなのなの」という処理能力不足から来るエラーで埋め尽くされ、知恵熱で頭痛が痛かった。

女性ウケもする男性キャラの話と聞いて棍棒で殴られるくらいの覚悟はしていたが、ダンプカーがスピンしながら突っ込んで来たのではヘルメット程度では役に立たない。



映画はプリティーリズム レインボーライフの登場人物である、「神浜コウジ」「速水ヒロ」「仁科カヅキ」の3人からなるユニット「Over The Rainbow」のライブシーンから始まる。アイドル的衣装に身を包み、スケート靴を履いた3人が曲に合わせて踊り出し、ボクの第一印象は「スケート靴でステップキメて、少年隊より凄いな」程度のものだった。この程度なら全然問題ない。ボクは高を括り、彼らのライブを鑑賞し始めた。

すると、ボクは突然自転車に轢かれた。何を言ってるのかわからないかもしれないが、確かにボクは3人が乗る自転車に轢かれたのである。後ろに女の子を乗せていたかもしれない。自転車の二人乗りは道交法違反だぜ。

ライブ中にかなり恥ずかしいタイプのイメージ映像が殴り込みをかけてきたのである。プリティーリズムの、プリズムジャンプというのはこういうものらしい。格ゲーで必殺技が決まると演出が入り、相手はなす術ないのと同じだろうと納得したボクは多少ダメージを受けながらも、3人が自転車の後ろに乗せた女の子に言った「しっかり掴まってろよ」という旨のセリフを初見のボクに対する挑戦状だと受け取り、「まだまだ戦えるぞかかってこい」とファイティングポーズを取った。



結果から言うと惨敗である。

回想シーンに、突然始まるイナズマイレブン的必殺技に、武内くんの腹筋に、スーパーゴーストカミカゼアタックの応酬に、しつこ目に飛んでくる唇に、男に欲情する主人公に、風呂場のランバ・ラルに、三木眞一郎に、空戦にいただろって感じのオレンジ髪に、音楽がメチャクチャ盛り上げてくるハグに、当然のように使われるTRFに、完全に宙に浮いてるブレイクダンスに、イメージ映像が終わった時に現実で退場したキャラに、ほとんど出番がない半分ほどのキャラに、ボクは1時間ほどひたすら轢かれ続けた。抵抗は意味を成さず、暴力の雨が止むまで息を絶やさない事だけがボクにできる全てだった。つまらなかったら殴ってやろうと思っていた映画にタコ殴りにされた。

一緒に観たプリリズオタクもだいぶ訳が分からなかったらしいので、ボクにプリリズの知識がないからというだけではないらしい。



ボクのアニメ史に残るレベルの交通事故である。プリリズ初見とはいえあそこまで酷い目に遭わされなくても……待てよ?プリズムショー初見で!?交通事故を起こす!?!?これはつまり、キンプリの主人公である一条シンくんと全く同じ立場なのでは!?!?!?

一条シンくんは冒頭のライブを鑑賞し、スーパーゴーストカミカゼアタックによってゲッツされたハートの高鳴りから自転車で土手からダイブし、地面に激突したところを目撃された人にスカウトされてプリズムショーの世界に足を踏み入れる存在なのである。



そう、プリリズ初見で完全に交通事故を起こしたボクと主人公は完全に重なっていたのだ。創作において共感させる登場人物作りが重要なことであるのは今更言うことでもないだろう。

キンプリは既存ファン向けの映画でありながら、プリリズ初体験の客にとっては視聴後にプリリズ世界に足を踏み入れるための門でもあったのだ。聖なる扉は開かれた。ディバインゲートは本当にあったんだ!父さんは嘘つきなんかじゃなかった!!



ボクはプリティーリズムを見ます。とりあえずレインボーライブから。キンプリから叩きつけられた衝撃を少しでもなんとかしたいし、新しい煌めきに出会える気がするのだ。



本当に頭が痛い中こんな記事を書いたのは、今日中に乱文でいいから形にしておかないとこのまま死にそうだったからだ。

願わくば、この記事が、プリティーリズムを見たことがないという人をキンプリ鑑賞に向かわせ、同じ目に遭わせるもとい、プリリズ世界に入門させるきっかけとなれば幸いである。